すべてのものに始まりがあり、盛りがあり、終わりがある。
春に芽吹き、夏には茂り、秋に実り、冬枯れる。
そして冬の終わりはもう春の始まりである。
途切れることのない無限の円環として、この世界はある。

終わりゆくものを最後まで愛しみ、心を寄せていくことを「なごり」という。もともとは浜辺に波がうち寄せて、引いた後に残された貝殻や海藻などを指す
「波残り」が語源と言われている。くり返し寄せては引いていく波が、砂浜にそっと残していくもの。それは、しだいに愛惜や追憶の心のありようへと変わっていった。

和歌や文学、工芸や芸能などさまざまな分野において、日本人は「なごり」を特別大切にしてきた。茶の湯では、お茶会が終わって客を見送った後に亭主が茶室に戻り、独りお茶を喫しながら今日の様々な出来事を思い出す事を「余情残心」という。それはもう二度と戻らない一期の出会いをいつくしみ、深い余韻を味わうことだ。

そして変わりゆく四季の中で「なごり」の季節と呼ばれるのは、秋である。
あざやかに紅葉し、しだいに末枯れていく姿に最後の輝きを見いだす。